Masuk今からおよそ10年前、ある国の悲劇によって世界中を恐怖させた。
その国は、赤い地獄ーレッドヘル。 昔は世界で一番平和で活気のある国だったが10年前の事件によって人はこの国に立ち入る事を禁止された。 そう、人はいない。 昔の事件の影響によって太陽は隠れこの国は年中黒い雲に覆われ冷たい風が街を吹き抜ける。 レッドヘルの中心部には一つだけ壊れていない小さめの建造物があり、その建造物はこの国の地下に繋がっている。 その地下には世間には知られていない場所があった。 地下の悪魔の住処ー通称(悪魔界) そこにはたくさんの悪魔が生存していて地下には建物や店が出回っていた。 そこにも人間と同じようにトップの悪魔が存在しその者達が集う場所があった。 その部屋には10人程度の悪魔達が椅子に座っていてそのうちの1人の男が言った。 「おい、聞いたかよ?あのロフィスがやられたらしいぞ?」 その男は逆立った黒髪に目がつり上がっている悪魔だった。 その発言に今度は手足の細いスタイリッシュな体型に金の長髪にウェーブが掛かった大人女性が返答した。 「らしいわね。あの予知能力は私達にはない存在だったから結構便利だっだのに…残念だわ。」 その女性はロフィスではなく、ロフィスの能力にしか興味がないようだった。 「なに呑気な事言ってやがんだ。ロフィスが殺られたって事はよぉ、あの悪魔祓いとか言う人間に負けたってことだろーが!」 逆立った髪の男が金髪の女性を睨みつけ怒鳴った。 それに対して女性はクスッと笑い。 「全く、まだまだ可愛い"憤怒"ね。まるで怒鳴るのがカッコ良いと思ってるような学生の反抗期のようね。」 「うっせーな"色欲"のくそババァ。てめえみてえなバカ女は男のケツでも追っかけてろ!」 憤怒と言われた男は凄みを利かしながら言った。 すると女性から笑顔は消え、無表情の顔になった。 ガタァンッ!! 「……は?あんた喧嘩売ってんの?」 椅子から立ち上がると黒いオーラが体の周りから発生し、それを見て憤怒の男が下品に笑いながら挑発する。 「ハッ!やるなら掛かって来いよ!このブスが!」 「このガキ……一回死ななきゃ分かんないのかな…?」 2人が攻撃態勢に入ろうとしたその時。 バァァァン!!! 机を思い切り叩く音が部屋に響いた。 2人は同時に攻撃態勢に入るのをやめ、音が発生した方を向いた。 机を叩いたのは黒スーツに大きな黒いハット帽を被った銀色の髪の男で目は帽子で隠れていた。 そしてその帽子の男はドスの効いた低い声で言った。 「……おい、てめえら2人よ。まさか今回俺たちを呼んだのはてめえらの喧嘩を見物させるためか?ああっ?」 深く被った帽子の隙間から見えた鋭い片目は2人を一直線に見つめ、2人は怯えながら自分たちの席に座る。 その怯えた姿に帽子の男はため息をついた。 「…で。ロフィスを殺ったその悪魔祓いはそんなに強いのか?」 黒い帽子の男が聞くと憤怒の男は首を振りながら。 「いやー、人間の方はまだまだヒヨッコだな。だが、あいつの中にいる悪魔がとんでもないやつだ。」 「中にいる悪魔?…ああ、そういや悪魔の中にもおかしな奴が何人かいたな。人間とわざわざ契約して体を乗っ取らないやつが。」 「そうだ。そのおかしな悪魔が今回ロフィスを殺した人間に魔力を与えてるらしい。」 「あっそ。…で、結論から言うとどうしたいんだ?」 悪魔祓いに興味を示さない黒い帽子の男だったが次の憤怒の男の言葉がきっかけで興味を示した。 「その悪魔祓いは次の目的地を、あの大国イフリークに決めてるらしい。その大国を国民ごと…潰す!」 周囲にいた他の7人の悪魔は憤怒の男が言った事に驚きを隠せなかったが色欲の女と黒の帽子の男は表情を変えず面白そうに聞いていた。 「あの悪魔祓いをのさばらせていても俺たちに得な事はねえ。そんなのは弱い内に殺すのが手っ取り早くていいだろう?」 「そうね。けど、私たちが戦いに出るのはこの悪魔界では禁止されてるはずよ?どうやって国一つ潰す気?」 色欲の女が聞くと憤怒の男は不敵な笑みを浮かべながら言った。 「そうだな……今ここにいる俺と色欲と怠惰のコードネームをつけられた俺たち3人の悪魔は悪魔界の要だ。直接戦うのはあの方に禁じられてるが俺たちにはアレがあるだろ?」 「アレって、もしかして…?」 「そうだ…実験段階だが別にいいだろう。ただ国を潰す簡単な事だから計画には支障ないだろう?」 「しかし、あれを使うのは…」 「賛同する。今の時点で獄魔以上の悪魔が俺たち以外にいないとすればアレを使うしかないだろ。」 「さすが物分りが早い!よし、お前ら!すぐにあの部屋を解放するんだ!」 怠惰の男の賛同を機に憤怒は周りにいた他の悪魔7人は命令によってこの部屋を退出しアレの部屋に向かった。 ここは憤怒達がいた建物の最下層にある地下室。 光を通さない真っ暗闇の空間の中には階段とその前にはノブのついた扉があった。 何ヶ月も放置された地下室に珍しく階段を降りる足音が廊下中に鳴り響いた。 憤怒に命令された7人の部下達は地下室に着くとその中の1人が質問した。 「あの、ここって何の部屋なんですか?」 「いや、俺も知らないがこの部屋に国一つ潰せるほどの何かがあるはずだ。」 「へぇー。…それにしても汚い場所ですね。まるで何年も使われてないみたいですね。」 「そうだな。ここは普段立ち入り禁止だからな。俺もここに来るのは初めてだ。…じゃ、開けるぞ。」 部下の1人がズボンのポケットから手のひらサイズの鉄製の鍵を取り出し、扉に刺した。 ガチャっと音が鳴り響き、扉が開くと錆びた鉄の擦れる音が地下室中に鳴り響いた。 扉が開き切ると同時に鍵を持っていた部下はどういうわけか胸に穴が空き、血を吐きながら倒れた。 「がぁ………」 「な、どうしましたか!?……こ、これは……」 1人の部下が倒れた部下に寄る際に部屋の中を見てしまった。 その中を見た瞬間、他の残った7人の部下達は全員胸に穴を開けられ血を吐きながら倒れた。 「くっくっくっ…全く…相変わらず血の気の多いやつだ…」 階段の上からまるでこれを想定したかの様に部下達が倒れてからコツコツと憤怒は降りてきた。 「久しぶりだな、どうだ解放された気分は。」 憤怒は扉に向かって声をかけると中から黒い手が現れ扉を全開に開けた。 その姿はロフィスが悪魔化したような黒い皮膚の人間型のようだがそれよりも筋肉質な感じで獄魔以上のプレッシャーを憤怒は感じた。 「ほぉ、実験は順調だったみたいだな。5年前の実験当初に比べたらかなり魔力が上がってやがる。」 「………」 目の前にいる悪魔は憤怒の言葉に反応するどころか敵と判断し爪を伸ばして威嚇した。 「おいおい、お前はそんな"爪"に頼らなくても強いはずだぞ?わざわざ弱い悪魔の戦い方なんてしなくていいだろ?それに…俺に逆らえると思ってんのか?あっ!?」 憤怒はまるでこの世のものとは思えない鬼の様な形相で睨むと只ならぬ魔力が部屋中に充満し目の前の悪魔は爪を引っ込め額から一筋の汗が垂れた。 「それに、お前はさっき悪魔の心臓食ったから理性はちゃんとあるはずだ。あんまふざけてるとお前から潰すぞ?」 「……あぁ、すまねー…。で、今まで俺をこんな所にぶち込んどいて今度は何のようだ?」 さっきと違い、その悪魔は憤怒に怯えてるのか身震いしながら質問した。 「大国イフリークを潰せ。どんなやり方でも構わん。町を破壊し人間どもを好きなだけ殺戮してもいい。簡単な事だろ?」 「…わかった。お前らの頼みは聞きたくないが俺もこの5年間この部屋で魔力を高めてきたからな。腕試しにやってやるよ。」 そう言うと男は黒い皮膚姿から筋肉質で黒いスーツを着た人間姿になると憤怒を残して地下室の階段を上がって行った。 残された憤怒は部屋の中を覗くとそこは体育館のように広いがそこには人間の死体が山のように積んであってそれを見てこう言った。 「…たく、人間をこんなに食い散らかしやがって。…まあいいだろう。…くっくっく。せいぜい地上で楽しんでくればいいさ。PDO"04"(プロジェクト・デビル・オペレーター)。」 憤怒は誰もいなくなった地下室で大きく笑い、その声はしばらくの間消える事なく反響し続けた。ドグマに言われた通り朝の4時半に起きたグレンは、龍技の真髄の修行をする為にドグマの後ろに付いて歩いていた。早朝に起こされたにも関わらずグレンは眠そうな素振り1つ見せなかった。「初日で眠くはないのか?」「ああ。普段からあまり睡眠を取らない方だ。昨日はゆっくり出来た。」グレンは旅をしてる時もそうであるが、いつ自分の身に危険が起きても対処出来る様に熟睡は基本的にしない。その為、グレンにとっては明朝4時半と早い時間に起こされても睡眠時間的には十分であった。「…そうか。この程度なら生意気な口も普通に叩けるのか。よかろう、遠慮はいらんという事だな。」ドグマは余裕そうなグレンに対し、そう脅しをかける。「(そういえば、昔アガレフに修行を付けてもらう時も同じ様な事を言われたな。)」……思い出すだけでゾッとし、血の気が引いていくのが分かる。あの時は毎日失神するまでボコボコにされていたなぁ。アガレフの修行は本当にキツかった。「よし、着いたぞ。」真っ暗だった為、到着するまでどこを歩いているのか分からなかったが数十分後、ドグマが連れてきた場所は竜の遺跡にある川の上流の方だった。「川で修行するのか?」「そうだな。修行と言えば修行かな。足の裾を捲(まく)れ。今から川で魚を捕まえる。」そしてドグマはズボンの裾を膝上まで捲り上げると片足ずつ川に入っていく。そして川の真ん中辺りまで行くと水面の上で手掴みする様な構えをした。…バシャッ!素早く水面に手を突っ込み一瞬で掬(すく)い上げる。手のひらからはみ出そうな大きさの魚がドグマの手に捉えられ、捉えた魚を竹と藁で編んだ肩掛けの魚籠に入れる。そして再び魚を捕まえる構えに戻った。「…何してる?お前もやらんか。」「あ、ああ。」グレンもドグマと同じ様にズボンを膝上まで捲り上げて川に入ろうと右足を水につける。「うっ!……」あまりの冷たさに声が出てしまうグレン。朝方の気温の低い山奥の川の水。冷たくない訳が無い。「冷たいだろ?因みに魔法は一切使うなよ。修行にならんからな。」「…いや、魔法使わないと見えねえよ。」只でさえ冷た過ぎる水に慣れない中、真っ暗な時間帯で水中の魚が見えない。しかも道具は一切使わず難易度の高い手掴み漁。目を凝らして水面を見るが当然見える訳が無い。グレンは困惑してる中、隣でドグマは流れ
時は遡る事3日前。この日はカイル、エミル、ミーナが東の大国に到着したばかりの日であった。しかし、ここは北の大国と東の大国よりも更に北東部の奥にある場所。そこは一般の人が立ち入ると必ず道に迷うとされる竜爪の錯林(りゅうそうのさくりん)]と呼ばれる森林があった。その森林の中にある地面は深い裂け目や溝が幾筋も走り、獣道や細い道がそれに沿って複雑に分岐している。道はまるで生き物のように折れ曲がり、進んだはずの者を同じ場所へ戻し、方角の感覚を狂わせる。異常な磁場がコンパスの指針も狂わせる為、人の五感や魔力の流れを読めない人が立ち入れば一瞬で迷路へと変わる場所。この森林の中に1人の男が歩いていた。彼の名前は紅の悪魔祓い(デビルブレイカー)グレン。彼はレミールでミーナ達と合流したのだが、そこの国民に国を守る様に提案される。しかし、それを拒否したグレンは国民に危害を加えられた挙句、抵抗すると悪魔と言われて非難された。そしてグレンは自分のせいでミーナに危害が加わると考え、自ら1人になる道を選んだのだ。では何故彼が今この森林に居るのか?(おい、いい加減にしろ!いつまで歩き続けるつもりだ?もうかれこれ3日は歩いてるぞ?)グレンの中に居る悪魔、リフェル。本名強欲のマモンが話し掛ける。グレンはこの竜爪の錯林(りゅうそうのさくりん)に立ち入ってからかれこれ3日は経っていたのだ。「……この森、まるで生きてるみたいに場所が変化してる。ずっと同じところをグルグル回らされているみたいだ。」木々に囲まれて複雑に分岐した細い道を辿っていくも、いつの間にか元来た道に戻っている。更に元来た道をよく確認すると木々の形や生え方、地面の裂け目の形が少し違っていた。(何回この道来るんだよ!もう100回くらいこの光景見てるぞ!)「……いや、違う。よく見てみろ。この地面と木の並び方。少し違って見えないか?」(は?そんなもん覚えてる訳ないだろ!)「最初来た時はこの地面の裂け目は3本だった。だが今は2本。木も1本1本捻れてたのが真っ直ぐになってる。」(…長い事同じ光景を見て疲れてんのか?…いや、待てよ…グレン、何が言いたい?)何かに気付いたリフェルはグレンの考えを聞く事にした。「多分だが俺達が前に進めば進む程、木や道の形が変化して最初来た時と同じ光景を見せられる。けど、地面
悪魔に襲撃されたクレーアタウン。 アスモディウス達との戦闘により、平和だった町の殆どの建物は半壊している。 今すぐ普通の生活に戻れそうには無かった。 ゴウシが東の大国ノームに救助を要請したお陰で、大型のバスの様な魔力式四輪駆動車が到着。 その中から現れたのはノームの救護隊員達であった。 救護隊員達は生き残ったクレーアタウンの人達を誘導し、自分たちが乗ってきた四輪駆動車の中に乗せていく。 クレーアタウンが復興するまでは東の大国が責任を持って町の人達を守るつもりだった。 アガレフという父親を失ったミーナと、母親のリーナ。 リーナはまだ立ち直れず座りながら俯いていた。 無理もない。17年間、愛して待ち続けた夫が目の前で跡形もなく消えたのだ。 簡単に立ち直れる筈が無い。 そんなリーナの側にミーナはつき、一緒に横に座っていた。 一方カイルはエミルの隣に立ち、目の前にはライク、ニケル、フィナが順に並んで2人と対面していた。 「改めてお久しぶりね、カイル君。」 フィナはカイルを見て挨拶した。 さっきはミーナの父親の件もあり、互いにそれどころでは無く再会の挨拶をする間が無かった。 「まさか、フィナさんが2人と一緒に居たなんて知りませんでした。」 カイルはシルフで別れた筈のフィナが、月の民である元盗賊のライクとニケル。2人と行動を共にしてる事に驚いていた。 するとフィナはエミルの方に視線を移す。 「あなたがライクとニケルが言ってたエミルさんね。私はフィナ・プロミネンス。宜しくね。」 「こちらこそです。エミル・ウォーマリンと言います。……ライクとニケルも、久しぶりね。」 少しよそよそしく2人に言うエミル。 一応、ティラーデザートでエミルはライク達に「裏切り者扱い」されて離れる事になった。 当然エミルも言われて当然だと思っている。 カイルと戦ってくれた時は必死だった事もあって、あまり気にしていなかった。 しかし今になって冷静になると、どんな顔をして2人を見れば良いのかエミルは分からなかった。 そんなエミルの悩みを掻き消すかのように2人は笑いながら。 「エミルも、元気そうで何よりだよ。」 「けっ!何辛気くせー顔してんだよ!」 ニケルは笑顔でそう言うと隣のライクは頭に手を組みな
場面は変わりミーナに会わせて欲しいと訴えるリーナを抱えながら、フィナはライク達の後を追っていた。フィナの"陽"の力は短距離で時間をコントロールして戦うのに向いている為、ライク達に比べると遠くへ移動するのはそれ程速くは無かった。それでもフィナの足は早く、時間のコントロールによってミーナ達とは10kmほど離れていたが5分くらいで近くの地点まで辿り着いていた。「リーナさん!もうすぐですからね!」「ありがとうございます!」フィナが走っていると、少し離れた場所で巨大な光の爆発が起こったのが見えた。「あの爆発は一体…」「…ミーナ。」その時は丁度、アスモディウスに魔力操作"極"の力によって光の爆発を起こした時だった。目の前で起きた光の爆発を見たフィナとリーナ。リーナはフィナの背中に抱えられたままミーナの無事を祈り、そのまま彼女達の戦場へと近づいていく。バタッ。ミーナはうつ伏せのまま地面に倒れ、持っていた刀が右手から離れる。刀の刀身が地面に当たると、当たった部分から刀身がバラバラに崩れていった。魔力操作"極"で刀に膨大な魔力を込めた事で、刀に大きな負担が掛かっていたからだ。ミーナのその姿を見たアスモディウスは先程まで息を切らして焦っていたが、この光景を見るや急にニヤケ始めた。「ミーナァァァ!!!」「ミーナちゃん!」エミルとカイルは走りながら倒れたミーナの方へと走る。しかし、魔力も使い果たし体力の限界だったエミルは早く走れない。「クソ!俺も身体が痛くて動けねぇ!」「まずい!あのままじゃ、あの子が殺されてしまう!」ライクとニケルも同様、雷神と風神の反動とカイルから受けたダメージにより今は動ける状態では無い。辛うじて生きながらえたアスモディウスがミーナの1番近くに居た事で、ミーナは絶対絶命のピンチに陥っていた。「…あれぇ?もしかして、動けない感じ?私、ヤバいと思ったけど。」するとアスモディウスは指をパチンと鳴らした。死者蘇生で蘇った死者達を操る合図だ。ミーナの消滅の光はアスモディウスのみを対象にしていた為、死者達はそのまま残っていた。「勝負では私に勝ってたのに、なんとまあ……残念だったね!小娘がぁ!戦場で気絶する方が悪いんだよ!恨むなら、自分の間抜けさを恨みなさい!」「おい、役立たずの屍(しかばね)共!この小娘をグチャグチャにし
するとベルゼバブが出てきた方とは逆の奥の方から別の足音が聞こえてくる。あの時は魔法が使えなかったから分からなかったけど、ただならぬ魔力を感じる。しかし、悪魔の様な不気味な魔力では無い。温かみのある優しい光の様な魔力。その魔力を持った人…人では無いが、ミーナとベルゼバブが居る方へ歩いてきた。「久しいのう。ミーナ。」その姿は以前ミーナと精神世界で対面した時に見せた、ミーナと全く同じ姿の状態のエル(ミカエル)が暗闇から現れた。「あなたはエル…」「な、何で!?何で君が居るの?大天使・ミカエル!」ベルゼバブはミーナの姿をしたミカエルを見て驚きを隠せなかった。普段無邪気に相手を挑発したりするベルゼバブが焦りを感じている。悪魔にとって天使という存在は、嫌悪を抱くと同時に恐怖の対象でもあった。ベルゼバブに視線を移すミカエル。「そなたはベルゼバブ。妾はこのミーナと共存してるのじゃ。…この姿じゃ、ややこしいな。」そう言うとミーナの姿をしたミカエルは変化していく。そしてミカエルは姿を見せた。白銀の長い髪を風に揺らし、透き通る青い瞳で静かに微笑む天使の翼の女性。白を基調とした和の装いには淡い金の煌めきが散り、腰紐と房飾りが上品に揺れる。大きな白い翼を広げたその姿は、神域の気配そのものだった。「それが本当のエルの姿…本当に天使みたいだ…」ミーナは天使の姿のミカエルに驚いていたが、その神々しい姿に見惚れいた。「天使みたいでは無い。妾は天使なのじゃ。」ニコリと微笑みながらミカエルは言った。柔らかいその表情と立ち姿はその名の通り天使と呼ぶに相応しく、一つ一つの言葉や所作が周囲をまるで温かく包み込むかの様である。その温もりは暗闇の精神世界が天国の様に思える程だ。「大天使がミーナの中に居たなんて…まさかとは思うけど、君の力を彼女に貸し与えてたりしないよね?」「妾の"恩恵"の力か?ええ、そうじゃ。妾の力を与えた事でミーナは力を使えるぞ。」何てこった…と言わんばかりの顔をしながらベルゼバブは手を頭に抱えた。何故ベルゼバブが頭を抱えてるのか分からないミーナ。「え、何か不都合な事でもあるの?」「不都合といえば、不都合かな…天使は僕達悪魔の魔力を凌駕するからね。何も対策しなければ、悪魔は天使によって一瞬で消されてしまう。」ベルゼバブの言う通り、一度
ミーナ達3人が戦っていたその頃。東の大国で元八握剣(やつかのつるぎ)であったギンジはミーナの母であるリーナを連れながら、他にも生き残ってるであろうクレーアタウンの市民を探していた。生き残っていた市民は結構居た為、全員助けに来てくれたギンジの後ろをゾロゾロと歩いて着いて行く。そんな中で思わぬ人物に出会った。その人はギンジにとってあまり会いたく無い人物。「ギンジ!お前、こっちに来てたのか!?」の太く低い声の主である彼の名前はゴウシ。八握剣(やつかのつるぎ)の土刃(どじん)と呼ばれる男である。見た目年齢が30代後半は過ぎてるであろうゴウシは、ベリーショートの茶髪に整えられた茶髭。八握剣のバンジョウやスイゲツと同じ侍の様な服装をしているが、体型はガタイが良いと言うよりも巨漢に近かった。丸太の様に太い腕に、武器は刀では無く斧を背中に担いでいた。「ゴウシ…そういえばスイゲツの奴が言ってたな。」ギンジはゴウシの事を嫌そうな目で見ながら東の大国ノームでスイゲツが言っていた事を思い出した。「はい!先程八握剣の土刃、ゴウシ様から連絡がありまして。最近東の近隣の国が悪魔に襲撃されているとの事です!」スイゲツがあの道場で報告した内容の発信源は確かゴウシであった。市民を助ける為の人手が足りない現状ではとても頼りになる存在であるが、国を出るつもりのギンジにとっては不都合でしか無かった。どうせこいつも八握剣(やつかのつるぎ)に戻れって言うに違いない。「お前が居てくれて良かった!ギンジ、俺もこの町の人達を助けたい!だから協力させてくれ!」しかし、ゴウシから出てきた発言はギンジの予想とは違っていた。「何だ、俺の事を引き留めようとしないのか?」「いや、今はそんな場合ではないだろう?そりゃ、お前には戻ってきて欲しいが、それよりも先に今はやるべき事があるだろ。」ゴウシは八握剣の中でも正義感が人一倍強く、真っ直ぐな性格であった。その正義感に加えて人々の為に今自分に何が出来るのか、常に考えて行動出来る人である。しかし、不可解な事が一つあった。「確かゴウシが居る場所はここよりも数km離れていた場所だ。どうやってここまで来た?」高速移動や転移魔法を使えないゴウシには一瞬でここまで来る移動手段が無かった筈だ。ーーどうやってここまで来た?こいつはこの町には居ないと思