登入今からおよそ10年前、ある国の悲劇によって世界中を恐怖させた。
その国は、赤い地獄ーレッドヘル。 昔は世界で一番平和で活気のある国だったが10年前の事件によって人はこの国に立ち入る事を禁止された。 そう、人はいない。 昔の事件の影響によって太陽は隠れこの国は年中黒い雲に覆われ冷たい風が街を吹き抜ける。 レッドヘルの中心部には一つだけ壊れていない小さめの建造物があり、その建造物はこの国の地下に繋がっている。 その地下には世間には知られていない場所があった。 地下の悪魔の住処ー通称(悪魔界) そこにはたくさんの悪魔が生存していて地下には建物や店が出回っていた。 そこにも人間と同じようにトップの悪魔が存在しその者達が集う場所があった。 その部屋には10人程度の悪魔達が椅子に座っていてそのうちの1人の男が言った。 「おい、聞いたかよ?あのロフィスがやられたらしいぞ?」 その男は逆立った黒髪に目がつり上がっている悪魔だった。 その発言に今度は手足の細いスタイリッシュな体型に金の長髪にウェーブが掛かった大人女性が返答した。 「らしいわね。あの予知能力は私達にはない存在だったから結構便利だっだのに…残念だわ。」 その女性はロフィスではなく、ロフィスの能力にしか興味がないようだった。 「なに呑気な事言ってやがんだ。ロフィスが殺られたって事はよぉ、あの悪魔祓いとか言う人間に負けたってことだろーが!」 逆立った髪の男が金髪の女性を睨みつけ怒鳴った。 それに対して女性はクスッと笑い。 「全く、まだまだ可愛い"憤怒"ね。まるで怒鳴るのがカッコ良いと思ってるような学生の反抗期のようね。」 「うっせーな"色欲"のくそババァ。てめえみてえなバカ女は男のケツでも追っかけてろ!」 憤怒と言われた男は凄みを利かしながら言った。 すると女性から笑顔は消え、無表情の顔になった。 ガタァンッ!! 「……は?あんた喧嘩売ってんの?」 椅子から立ち上がると黒いオーラが体の周りから発生し、それを見て憤怒の男が下品に笑いながら挑発する。 「ハッ!やるなら掛かって来いよ!このブスが!」 「このガキ……一回死ななきゃ分かんないのかな…?」 2人が攻撃態勢に入ろうとしたその時。 バァァァン!!! 机を思い切り叩く音が部屋に響いた。 2人は同時に攻撃態勢に入るのをやめ、音が発生した方を向いた。 机を叩いたのは黒スーツに大きな黒いハット帽を被った銀色の髪の男で目は帽子で隠れていた。 そしてその帽子の男はドスの効いた低い声で言った。 「……おい、てめえら2人よ。まさか今回俺たちを呼んだのはてめえらの喧嘩を見物させるためか?ああっ?」 深く被った帽子の隙間から見えた鋭い片目は2人を一直線に見つめ、2人は怯えながら自分たちの席に座る。 その怯えた姿に帽子の男はため息をついた。 「…で。ロフィスを殺ったその悪魔祓いはそんなに強いのか?」 黒い帽子の男が聞くと憤怒の男は首を振りながら。 「いやー、人間の方はまだまだヒヨッコだな。だが、あいつの中にいる悪魔がとんでもないやつだ。」 「中にいる悪魔?…ああ、そういや悪魔の中にもおかしな奴が何人かいたな。人間とわざわざ契約して体を乗っ取らないやつが。」 「そうだ。そのおかしな悪魔が今回ロフィスを殺した人間に魔力を与えてるらしい。」 「あっそ。…で、結論から言うとどうしたいんだ?」 悪魔祓いに興味を示さない黒い帽子の男だったが次の憤怒の男の言葉がきっかけで興味を示した。 「その悪魔祓いは次の目的地を、あの大国イフリークに決めてるらしい。その大国を国民ごと…潰す!」 周囲にいた他の7人の悪魔は憤怒の男が言った事に驚きを隠せなかったが色欲の女と黒の帽子の男は表情を変えず面白そうに聞いていた。 「あの悪魔祓いをのさばらせていても俺たちに得な事はねえ。そんなのは弱い内に殺すのが手っ取り早くていいだろう?」 「そうね。けど、私たちが戦いに出るのはこの悪魔界では禁止されてるはずよ?どうやって国一つ潰す気?」 色欲の女が聞くと憤怒の男は不敵な笑みを浮かべながら言った。 「そうだな……今ここにいる俺と色欲と怠惰のコードネームをつけられた俺たち3人の悪魔は悪魔界の要だ。直接戦うのはあの方に禁じられてるが俺たちにはアレがあるだろ?」 「アレって、もしかして…?」 「そうだ…実験段階だが別にいいだろう。ただ国を潰す簡単な事だから計画には支障ないだろう?」 「しかし、あれを使うのは…」 「賛同する。今の時点で獄魔以上の悪魔が俺たち以外にいないとすればアレを使うしかないだろ。」 「さすが物分りが早い!よし、お前ら!すぐにあの部屋を解放するんだ!」 怠惰の男の賛同を機に憤怒は周りにいた他の悪魔7人は命令によってこの部屋を退出しアレの部屋に向かった。 ここは憤怒達がいた建物の最下層にある地下室。 光を通さない真っ暗闇の空間の中には階段とその前にはノブのついた扉があった。 何ヶ月も放置された地下室に珍しく階段を降りる足音が廊下中に鳴り響いた。 憤怒に命令された7人の部下達は地下室に着くとその中の1人が質問した。 「あの、ここって何の部屋なんですか?」 「いや、俺も知らないがこの部屋に国一つ潰せるほどの何かがあるはずだ。」 「へぇー。…それにしても汚い場所ですね。まるで何年も使われてないみたいですね。」 「そうだな。ここは普段立ち入り禁止だからな。俺もここに来るのは初めてだ。…じゃ、開けるぞ。」 部下の1人がズボンのポケットから手のひらサイズの鉄製の鍵を取り出し、扉に刺した。 ガチャっと音が鳴り響き、扉が開くと錆びた鉄の擦れる音が地下室中に鳴り響いた。 扉が開き切ると同時に鍵を持っていた部下はどういうわけか胸に穴が空き、血を吐きながら倒れた。 「がぁ………」 「な、どうしましたか!?……こ、これは……」 1人の部下が倒れた部下に寄る際に部屋の中を見てしまった。 その中を見た瞬間、他の残った7人の部下達は全員胸に穴を開けられ血を吐きながら倒れた。 「くっくっくっ…全く…相変わらず血の気の多いやつだ…」 階段の上からまるでこれを想定したかの様に部下達が倒れてからコツコツと憤怒は降りてきた。 「久しぶりだな、どうだ解放された気分は。」 憤怒は扉に向かって声をかけると中から黒い手が現れ扉を全開に開けた。 その姿はロフィスが悪魔化したような黒い皮膚の人間型のようだがそれよりも筋肉質な感じで獄魔以上のプレッシャーを憤怒は感じた。 「ほぉ、実験は順調だったみたいだな。5年前の実験当初に比べたらかなり魔力が上がってやがる。」 「………」 目の前にいる悪魔は憤怒の言葉に反応するどころか敵と判断し爪を伸ばして威嚇した。 「おいおい、お前はそんな"爪"に頼らなくても強いはずだぞ?わざわざ弱い悪魔の戦い方なんてしなくていいだろ?それに…俺に逆らえると思ってんのか?あっ!?」 憤怒はまるでこの世のものとは思えない鬼の様な形相で睨むと只ならぬ魔力が部屋中に充満し目の前の悪魔は爪を引っ込め額から一筋の汗が垂れた。 「それに、お前はさっき悪魔の心臓食ったから理性はちゃんとあるはずだ。あんまふざけてるとお前から潰すぞ?」 「……あぁ、すまねー…。で、今まで俺をこんな所にぶち込んどいて今度は何のようだ?」 さっきと違い、その悪魔は憤怒に怯えてるのか身震いしながら質問した。 「大国イフリークを潰せ。どんなやり方でも構わん。町を破壊し人間どもを好きなだけ殺戮してもいい。簡単な事だろ?」 「…わかった。お前らの頼みは聞きたくないが俺もこの5年間この部屋で魔力を高めてきたからな。腕試しにやってやるよ。」 そう言うと男は黒い皮膚姿から筋肉質で黒いスーツを着た人間姿になると憤怒を残して地下室の階段を上がって行った。 残された憤怒は部屋の中を覗くとそこは体育館のように広いがそこには人間の死体が山のように積んであってそれを見てこう言った。 「…たく、人間をこんなに食い散らかしやがって。…まあいいだろう。…くっくっく。せいぜい地上で楽しんでくればいいさ。PDO"04"(プロジェクト・デビル・オペレーター)。」 憤怒は誰もいなくなった地下室で大きく笑い、その声はしばらくの間消える事なく反響し続けた。ラーケウスの悲劇を聞いたライクとニケルとフィナ。ライクとニケルに関しては、昨日ミーナからグレンの事を聞いていた為、ラーケウスの話が本当の事なのだと理解していた。自分達も同じ様に理不尽な目に遭ってきた。共感は出来る。しかし。「…お前の言ってる事は本当の事なんだろう。同情はする。」「けどな。お前にどんな過去があろうと、今お前らがこの国に攻めてきている事は別問題。理由にはならねえんだよ!」ライクは両腕に雷を発生させながらそう言った。ニケルも同様に。「自分の辛い過去を盾にしても、間違いを正当化する事は出来ない。そんな過去の話で、僕達が惑わされると思ったら大間違いだよ!」ニケルもラーケウスの悲劇の話に対してライク同様反論した。「ライク…ニケル。」2人はフィナの制止によって思考が冷静になっていた。そして2人は気付いた事がある。自分達だけが不幸なのでは無く、皆んなそれぞれ心に闇を抱えている。だからと言って自暴自棄になり、簡単に堕ちてはならない。そういう時こそ自分1人で背負い込まず互いに助け合う事が大事なのだと、みんなと過ごして学んだライクとニケルであった。それを聞いたラーケウスは一気に表情が変わる。先程までのオドオドした感じでは無い。3人を蔑む様な冷たい眼差しで、頭を大きく右に傾けた。「そっか。…僕の言ってる事を理解してくれないんだね?」「分かった。じゃあもう良いよ。君達もあの男(バンジョウ)の様に毒で侵してあげるよ。」そう言ってラーケウスは両手の掌から紫色のガスを噴射する。ガスは霧散し、大きく広がっていくもそれに対してニケルは風の力で霧散したガスを吹き飛ばす。紫色のガスが吹き飛んだ事により、再び視界が晴れる。その隙にライクは超スピードでラーケウスの腹部に対し、雷で纏った拳で殴り飛ばした。「うおおお!!!」拳を振り抜くと、ラーケウスは50m程吹っ飛ばされた。するとニケルがフィナに向かって言った。「フィナさん!ここは僕とライクに任せて!フィナさんはギンジさんの所へ!」「ニケル!」「もしかすると、奴らは八握剣(やつかのつるぎ)のメンバーから徹底的に潰しに掛かってるんだと思う。もしかすると、ギンジさんも1人で戦ってるかもしれない。」「僕はニケルとあいつを倒すから、フィナさんはギンジさんを加勢しに行って欲しい!」ニケルの読み
一方、カイルとエミルは他の八握剣(やつかのつるぎ)のメンバーと合流する為に移動を続けていた。そしてようやく辿り着いた時、目の前の光景を見て驚愕した。そこには。「え、何で?…何で、ゴウシさん達が…。クロツチさんまで!」「スイゲツさん!ルキアさん!ヒナタさん!」何と、先程まで特攻部隊を圧倒していた筈のしかも八握剣である5人が血を吐いて倒れていたのであった。何があったのか?それは、数分前に遡る。特攻部隊を倒し、次の地点へと移動を開始していた5人。5人はある1人の少女を見つけた。濃いピンクの髪を2つに括り、右目には白い眼帯を付けている少女。少し気が病んでそうな見た目をしていた。一見すると戦いには無縁そうな感じであったが、北の大国の象徴である純白の軍服を身に纏っていたが、女性の為か下は白いスカートになっていた。間違いなく、ウンディーネ軍の先行部隊。「ゴウシさん。ここは俺がやるよ。」そう言ってスイゲツは自身の刀を鞘から抜き、目の前の少女の方へと歩いていく。少女は何故か地面にへたり込んでおり、ビクビクと震えていた。「ヒィィ!ごめんなさい!ごめんなさい!」少女は怯えながらひたすらに謝り続ける。「え?」「私、もう戦えません。戦いが怖くて逃げてきたのです。…ですから私を、襲わないで下さい!」左目から涙を流しながら懇願する少女。足元には自分の武器らしい、白くて細長いレイピアが置かれている。「そう言われても、あんた敵だからな。」「そうですよね。私の言う事なんて、誰も信じないですよね?」すると少女は足元に置いていたレイピアを取り出した。それに気付いたスイゲツは刀を構えるも、少女の行動を見て立ち止まる。少女は手に持ったレイピアの先端を自分の首元に向けていた。「分かりました。私の事が信用出来ないと言うのであれば今ここで、死んで見せます!」「お、おい!やめろ!何も自分からそんな事する必要なんて…」スイゲツは自殺しようとする少女を止めようとするも、少女は笑顔で。「ううん、良いんです。それで私の疑いが晴れるのなら。」「さようなら。」そして少女は自分の喉元に向けたレイピアをそのまま強く刺した。ザシュッ!!「…ゴフッ!」血を吐いてその場に倒れたのは、スイゲツであった。「通りすがりの、剣士さん。」少女は自分の喉元を刺したまま、倒れた
瞬く間に特攻部隊は部隊長であるボルケニアと副部隊長であるガロウが倒された。特攻部隊の副部隊長は残り2人。その内の1人が報告を聞いて驚いていた。「何だと!ボルケニア部隊長とガロウがやられたと!?」「はい!やったのは八握剣(やつかのつるぎ)の奴らです!その他にも多数の死者が!」「奴らめ!バラけて動くのでは無く、纏って各個撃破を狙ってるのか?…だが、戦場で戦力を分散させないのは逆に言えば守りが手薄になってるという事。」「皆の者!このままノーム王が居る城に向かう!八握剣以外の侍は大した事は無いから、狙うなら今だ!」「「ハッ!!」」2人目の副部隊長であるエンジュは部下の軍人に向けて命令を下すと、それにより部下達の士気が上がり走り出す。手薄になった防御網を突破するのは今の内だと言わんばかりに。しかし、その考えは大誤算であった。北の大国は東の大国の戦力を八握剣(やつかのつるぎ)と裏切ったネルだけだと思っており、それ以外の戦力については考えていなかった。当然、カイル達が居る事なんて想像すらしていなかった。突撃していた部下達。すると突然、バタバタと部下達が倒れていった。「な、何事だ!?」副部隊長のエンジュは目の前で突如倒れ出した部下達を見て言った。「エンジュ副部隊長!前方に2人の影が見えます!」「何!?」目で確認すると部下が言った様に、そこには2人の人影が見えた。1人は身長が低いが2本の黒い刀を持った黒髪の男。もう1人は黒いタンクトップとショートパンツを履いた水色髪の女性であった。そう、カイルとエミル。2人は一緒に行動しており、先ほど部下達が急に倒れたのはカイルの影の円展開で、影に入った部下達を斬ったからだ。エンジュは目の前のカイルの服装を見て気付いた。「そのマントと黒い服。間違いない、お前はイフリークの騎士団団長!カイル・エリオン!」「何故イフリークの騎士団が東の大国側に!?」全く想定していない状況に理解が追いつかないエンジュ。それに対してカイルは答えた。「この戦争でこの国の被害を減らす為だよ。」「悪いけど、君達をノーム王の所へは行かせない!」そう言ってカイルは2本の黒い刀である暗影蛇と黒纏蛇を構えた。「お前ら!撃て!撃てぇ!!」エンジュは部下に発砲命令を下し、即座に部下達は銃でカイルとエミル達を撃ち始める。しかし、
魔導砲・アステリアにより、火の海と化したノームの街。大都会の象徴であった何十階もある建物はその威力によって高い部分は消失した。燃えた瓦礫が辺りに散らばった地面は、平和な国から地獄の戦場へと一気に変えられる。上空の魔導戦艦はその変わり果てたノームを見下す様に宙に浮いていた。そして魔導戦艦から放たれた無数の戦闘機は地上に向かって急下降し、機関銃の様な物を地上に撃ち放つ。ズドドドドドドド!!!!機関銃の様な物から放たれるのは1発1発が魔力の籠ったエネルギー弾であり、地上に撃ち込まれた部分からは爆発が連鎖的に起きる。徹底的にこのノームを潰そうとしているのが分かる。小国など武力の低い国はこの攻撃で大半が機能不全に陥るだろう。しかし、この東の大国ノームは違う。魔力で動かす機械や医療など、他国よりも繊細な技術面が発展している先進国である。当然、軍事に関する機械も最先端の技術が搭載されているのだ。東の大国には風狼機巧工房(ふうろうきこうこうぼう)と呼ばれる、飛行艇や四輪駆動車を製造する機巧工房が存在する。(第31話参照)性能重視で機械が造られている東の大国が誇る技術の叡智(えいち)がこの場所に保管されている。その機巧工房から東の大国が造り出した戦闘機が上空へ飛び立ち、北の大国の戦闘機へ向かって行く。北の大国の戦闘機が100機を超える戦闘機に対し、東の大国側の戦闘機は40機程度。圧倒的に戦力の差は北の大国が上である。しかし、それはあくまで戦力差の話。最新の技術を搭載された戦闘機はその戦力差すらものともしなかった。東の大国の戦闘機はステルス機能が搭載されており、その機能によって戦闘機は透明化する事が可能。それにより、視覚的に見えなくなったところで東の大国側の戦闘機が反撃を開始する。エネルギー弾も北の大国の戦闘機とは違い自動(オート)で狙いを定める為、どれだけ戦闘機を速く操縦してても狙いがブレる事は無い。透明化した状態のまま自動で相手の狙いを確実に定め、一方的に攻撃を仕掛ける事で数の戦力差を埋める。これが、技術力の高い東の大国の戦闘機の力。数の量産は難しくも、その機能性は北の大国の戦闘機を遥かに上回っていた。視覚的に確認出来ず、例え戦闘機に乗った操縦士の魔力を感知したところで、気付いた時には既に撃ち落とされてしまうのだ。そして全ての北
一方、魔導戦艦を撃破した東の大国側は更なる北の大国の攻撃に備えて避難誘導が行われていた。次も都市部を襲撃してくるであろう北の大国の動向を予想し、国民達は総面積20㎢あるノーム王の城の城壁内へと誘導される。勿論全員を城壁内に誘導は出来ない。そこでグロードやネルが持つ空間移動の力で、子供を優先して他国へ転移させる事にした。行き先は西の大国イフリークと南の大国シルフ。両国は復興作業が順調に進んでおり、既に避難の受け入れが整っている状態であった。カイルはイフリークの騎士団に。そしてシルフの王の証を継承したフィナは大国に連絡した事によりスムーズに避難誘導が行えている。そしてカイルの両親と妹のレイアはグロードに空間転移でイフリークに転移させられる予定であった。「父上、母上。レイア。戦争が終わったら必ず迎えに行くから。」「うむ。カイル、無事を祈る…。」「カイル…絶対に生きて帰って来てね。」小さく返事するカイルの父親であるが、やはり心配なのか表情は暗かった。母親のカルラはやはり心配であり、涙を流しながら言った。そしてレイアはカイルに抱きついた。「…お兄ちゃん」強く抱きしめるレイアはカイルの胸に顔を埋める。「…大丈夫。大丈夫だから。」そんなレイアに優しく頭を撫でながらそう言うと、レイアはゆっくりとカイルから離れた。そして視線を後ろに居るミーナ、エミル、ライク、ニケルに向ける。「ミーナちゃん。エミルお姉ちゃん。」まずはミーナとエミルに向かって言う。「レイアちゃん。…また戻ったら一緒にお話ししよ!」両手を膝に付き、少ししゃがんだ姿勢のまま笑顔で言うミーナ。「そうね。レイアちゃんも、気をつけるのよ。」レイアの頭をポンポンと撫でてあげるエミル。「うん!またいっぱいお話ししよ!」そして今度はライクに向けて言った。「ライクお兄ちゃん!無茶な事は絶対にしないでね!」「…無茶な事しねーと勝てねえんだよ。」相変わらず、レイアに対してもぶっきらぼうに返事するライクであるがその返事に泣きそうになりながら。「だって、ライクお兄ちゃん1人で突撃して行きそうで怖いんだもん!」「わ、悪かった!ちゃんと気を付けるって!」泣きそうになるレイアを慌てて宥めるライク。そして最後にニケルに向いた。「ニケル様…。」「レイアちゃん…。」レイアとニケルはし
他国への軍事侵攻と併合を繰り返すことで領土を拡大している巨大な大国。ここは北の大国ウンディーネ。魔力資源と軍事拡張を国家存続の核とする極端な軍事国家であり、その統治思想は「戦果こそが存在価値」という歪んだ成果主義で統一されている。戦争で功績を挙げた者は地位・富・名誉を得る権利が与えられ、失敗者や非戦闘員には価値がほぼ与えられない。戦争で功績を挙げられなくとも、国家の軍事力拡大に繋がる軍資金を納めれば国から認められる。この仕組みを国民達に徹底させる為、この国では目に見える形で国民を上級、中級、下級という風に位置付け差別化した。どういう事か?その位置付けは国民の居住地域で分けられた。上級は名前の通り、貴族や戦争功労者など富裕層を指す。中級の国民は主に庶民の人達であるが、この者達は努力次第では軍に入隊し功績を上げる事で上級へと位を上げる事が出来る。そして下級は名前の通り、国の中でも最下層の人間の事を指す。大抵の下級国民が暮らす場所は政府の目に届かない場所に位置している為、治安が悪く劣悪な環境。ここには国に対する反逆行為を行った者、犯罪を行った者、北の大国の軍事侵攻により領土を奪われたその土地の人達が住んでいた。以前ライクとニケル、グロードが北の大国に訪れた際に出会った孤児の兄弟も下級国民であった。(第24話参照)下級国民は全てにおいて最底辺であり、人権というものは殆ど存在しない。これは領土を奪った他国の人間が自国に対して反撃しない為の抑止力にもなるが、それだけでは無い。先程説明した様に中級国民も犯罪や反逆行為を行う事で下級国民に成り下がる可能性があり、国民はそれを恐れていた。ーーこんな底辺の人間にはなりたく無い。こうして劣悪な環境の中で過ごす最底辺に自分もなる可能性がある事を知らしめる。それにより、国民全員に危機感を持たせながら国の為に必死で働かせられるのだ。また、人間とは自分より下を見て優越感に浸る生き物。自分達よりも底辺の人間が居る事により優越感に浸らせれば、国民のストレスの捌け口は自然と下級国民へと移る。この「働き蟻の法則」にも似た様な差別化の仕組みが、北の大国という巨大な軍事国家を成り立たせていた。「軍事の為に働かざる者、人としての権利を得るべからず。」北の大国にはその様な言葉が昔からあった。この国民の差別化。一見
その頃、ミーナ達はグレンとカイルが乗った馬車と離れてしまい、現在は残った人達を騎士団達は馬車の外に集めさせた。しかし、集められた一般の人達は数日前の事件から現在まで散々な目に遭っている為不満が高まっているのか騎士団の人達に文句を言っていた。「どういう事なんだよ!馬車が無くてどうやって移動するんだ!」「お前ら騎士団だろ!俺たち今物凄く困ってるの見てわかんねーのかよ!」「そうよ!私達はこれからどーなるのよ!」「何とかしろ!騎士団だろ!」口々に罵声を飛ばす一般の人達。無理もない。つい数日前までは平和に過ごしていたのだ。急にこんな事が続けば誰だって普通じゃいられなくなる。しかし、一般
あの日、私とその親友であるカイル・エリオンは家へ帰る途中で何者かに誘拐された。そして気づいた時はもうどこか分からない暗い暗い檻の中に閉じ込められていた。なぜ閉じ込められていたのかはあまり覚えていないけど、多分親から身代金としてお金を手に入れる為に利用しようとしたのだと思う。自分の親は確かに裕福だった。それは認める。けど裕福は幸せとイコールではない。お金があるから周りから違う目で見られ誰1人して私を対等に扱おうとした者はいなかった。親もお金が全てという考えの人でお金で私の人生を奪おうとした。私は小さい頃から一人ぼっちだった。檻の中にいる時、既に私は全てを諦めてしまっていた。意
時は少しさかのぼり、現在ミーナとハンジはグレンの部屋に向かおうとしていた。 「グレンの部屋は確か…こっちです!」 ミーナはハンジをグレンの部屋へと誘導していく。 そして、グレンの部屋の前まで着いた。 「グレン、大変だよ!カイル君が盗賊に…って、あれ?」 部屋を開けるがどこにもグレンの姿が見当たらなかった。 「…いないみたいね。」 「本当に、グレンは…」 こんな時でも勝手な事をするグレンに呆れるミーナ。 「どこ行ったのでしょうか?」 「分からないです…でも、あまり自分から動かないグレンが自分から動くって事は何かあるって事だと思いますよ。…何か、嫌な事が起こ
あれから数日後、助かったイフリークの国民達は他国の騎士団に救助されることになった。 絶望、それは誰しもがそう感じているだろう。 つい数日前まで、人と魔法で賑わっていたイフリークは見る影もなかった。 救助に来た他国の騎士団はイフリークの国民達を自分たちの国である南の大国 シルフに連れて行く事になり、カイル達も含めた騎士団や国民達は用意された100台以上ある馬車に乗せられた。 そこにはどういう訳かグレン達も乗る事になり、当然カイルはグレンに睨みを効かせる。 「おい…なんでお前がここに乗ってんだ?」 するとそれに対して軽く受け答えするグレン。 「俺たちは次に目指すところは